-CONCEPT-

伝統工芸は使われてこそ意味がある


いま、伝統工芸品と呼ばれる品々は、それほど遠くない昔、身近な物であり、暮らしの道具でした。
金属工芸においては、刀鍛冶は刀の他に鎌や包丁などの生活用品も作り、錺屋(金工細工師)は、装飾品である櫛や簪を製作していました。

生活スタイルが変化し、身の回りに工業製品があふれるようになると、様々な理由から、日常から切り離されていきます。
そして生活の中から、次第になくなっていきました。

元来、工芸の世界では、多くの場合、製作工程は細かく分業化されており、職人とはそれぞれの作業のスペシャリストでした。
そのため、その工芸全体の需要が低下し、分業化された流れが動かなくなると、企画・デザインができない職人たちは、
時代に合った商品をつくる事ができなくなります。技術が素晴らしくても、人々が求める品がつくりだせないのです。

日本の伝統的な技法には、未だ機械生産では表現できない素晴らしい技術が多々あります。
そして近年、日本の技術が世界でも感嘆を得ており、様々な分野で見直されてきています。

私は個人作家として、その伝統的技法・技術を活かせるモノづくりを考えています。
今の暮らしにあったデザインを考え、地金を造形し、彫り、磨いて仕上げる。 その全ての工程をハンドメイドでおこなう。
分業化せず、全てを一人で行うことで、日常に寄り添った作品が生まれ、そういうモノづくりが、工芸の伝承につながればと考えています。